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市場の歪みを突いて儲ける方法を開示 <書評:図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて 田渕直也>

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図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて (日本語) 単行本 – 2005/4/7

株式投資において、基本的にアクティブ運用がパッシブ運用に勝てない中、本書は、ほんの一握りのアクティブ運用の投資家がパッシブ運用に勝っている理由を、投資理論を援用して解き明かしています。

これを真似すれば、アクティブ運用でパッシブ運用を出し抜くことができるわけですが、事はそう単純でないことも分かります。以下に本書の概要を記し、最後に私の読後感を述べます。

本書の概要

本書は、先日の書評で取り上げた『ファイナンス理論全史』と同じ著者による著作です。

本書の言っていることを一言でいうと、市場は極めて効率的に機能しているが、わずかな歪みがあり、その歪みを突けば確実に利益を出すことができる、でもそれを実行できる人はほとんどいない、というものです。

市場の歪み

著者は、まずランダムウォーク理論を援用して、市場は原則的に効率的市場仮説に従って動くので、市場の歪みといったものはほとんど存在しないと説明し、その上で、行動ファイナンス理論を援用して、実際には、人間の認知にはバイアスがあるので、市場には稀にわずかな歪みが生じることがあることを説明しています。ポイントは以下のとおりです。

  1. 株価に影響を与える外部情報は、すべてリアルタイムで瞬時に株価の中に織り込まれる(効率的市場仮説)。
  2. そして外部情報は、瞬間的に正確に株価に反映されるので、結果的に市場には歪みが生じないことになる。
  3. また、この織り込まれ方についても、いつどのように特定の情報が株価に織り込まれるかは誰にもコントロールできないので、結果的に株価の動きはランダムになる(ランダムウォーク理論)。
  4. 株価の動きはランダムなので、誰にも事前に予測できない。その意味で、テクニカルもファンダメンタルズも分析手法として役に立たない。
  5. しかし、投資を行う人間には、利益を過大評価、損失を過小評価するなど、認知バイアスがあり(行動ファイナンス理論)、市場の動きにも、ほんの小さな出来事が想定外の大きな変動を生み出すような不規則な要素がある(カオス理論)。
  6. そのため、現実として、市場には稀にわずかな歪みが生じることがある。

市場の歪みを突いて収益化する3つの方法

そして、著者はこの市場の歪みを突いて収益化する方法として、次の3つの方法を紹介しています。

  • ランダムでないトレンドの利用: 外部情報の中には、株価に織り込まれるのに時間がかかるものがある。こうした遅効性の情報への対応を、他の市場参加者よりも速く正確に行えば、利益を出すことができる。また、これに対する反動、つまりミーン・リバージョン(中心への回帰)も、同じ意味で収益化の機会を提供している。
  • リスクプレミアムの利用: 高リスクの金融商品は、大勢の市場参加者から、実態よりさらに高リスクと認識されるので、その認知バイアスによってプレミアムが生じ、実際には相対的に高リターン、低リスクの商品となっている。
  • アービトラージ: 現物と先物、また同じ動きをする金融商品同士、逆の動きをする金融商品同士のわずかな時間差で生じる価格差を買ったり、空売りすることで「さや抜き(アージトラージ)」をすることができる。

詳しくは、本書を読んでいただくと、上記3つの手法が実際にどういうものなのか、もっと具体的によく分かる思います。実際のところ、相場が良くても悪くても利益を出しているヘッジファンドなどは、これらを活用して収益化しています。

読後感

確かに上記3つの方法を実行できたら、利益を出せるだろうと思いました。ちょっと難解な部分もありましたが、話の辻褄が合っているので腹落ちでき、なぜそこで利益が出せるのかというところも納得がいきました。

しかし、実際にこれらの方法を使って利益を出すのは至難の業だと思ったことも事実です。

まず、上記のような利益が提供されている機会を、現実の市場の中で特定するのが難しいということがあります。

また、仮にそうした機会を特定できても、上記3つの方法をためらわずに、なおかつ正確に実行することが難題として立ちはだかります。とくにリスクプレミアムなどは、誰もが怖がって手を出さないものに、あえて手を出すわけですからなおさらです。

その意味で、市場の歪みを利用して利益を出せる人が、わずかしかいないとういうのも納得できました。

私たちの大多数は、市場の歪みを収益化する側ではなく、自分の認知バイアスによって市場の歪みを生じさせる側にいるという指摘も納得できました。つまり、ごく少数の成功者に、利益を提供する側にいるということです。

投資が、art and scienceだということも改めてよく分かりました。細かい戦術部分では、数字のセンスが物を言いますが、俯瞰的に市場全体を把握する戦略部分では、数字の世界を超えた哲学的、芸術的センスが必要です。

投資の面白さ、難しさ、奥深さを味わえる一冊でした。

図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて (日本語) 単行本 – 2005/4/7

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