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2020年 米議会選挙 ― 大統領選と同日実施、米経済を左右する絶大な議会パワーの秘密

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11月3日の大統領選挙の日には、議会選挙も同時実施されます。そして、この議会選挙の結果も、大統領選挙に次いで極めて重要になってきます。なぜなら、議会は予算権を握っており、選挙結果は米国経済の行方を左右するからです。

そんなわけで、きょうは議会選挙の要点と、国政へのインパクトを見ていきたいと思います。

米連邦議会の概要

米国の議会は、上院(Senate)と下院(House of Representatives)の二院制です。

上院は、定数が100議席で、各州から2名選出されます。任期は6年ですが、3分の1の議員が2年ごとに改選されます。

下院は、定数が435議席で、各州に人口に比例した議席数が配分されています。任期は2年で、2年ごとに全員が改選されます。

このような制度になっているため、米国議会は、大統領選挙の年と、その中間の年という2年ごとに顔ぶれが入れ替わります。

結果的に、上下両院で過半数を制する政党が入れ替わることがあるので、これが国政に重大なインパクトを与えます。

米国議会の絶大な権限

米国の大統領は、大きな権限を持っていますが、議会もそれに負けない絶大な権限を持っています。それは、法案と予算の承認権です。

法案と予算は、上下両院の過半数で承認されます。そのため、2年ごとの議会選挙では、民主党と共和党が、それぞれどのように上院、下院で過半数を制するかという点に注目が集まります。

上下両院で過半数を押さえる政党が同じだと、議会運営はスムーズです。

しかし、上下両院で過半数を押さえる政党が違うと、いわゆる「ねじれ国会」となり、法案や予算の承認のたびに揉めることになります。

また、この点には大統領の政党も関係してきて、大統領と、上下両院の過半数を制する政党が完全に同じだと、非常にスムーズな政権運営が可能になります。反面、この形は独裁的になるきらいがあり、有権者に避けられる傾向にあります。

他方、大統領と、上下両院で過半数を制する政党が完全に違うと、大統領と議会が完全に対立してしまい、国政が停滞することがあります。また、場合によっては、議会が大統領を弾劾(解任)する事態に発展することもあります。

よくあるパターンとしては、大統領と、上下両院のいずれかの政党が同じ(違う)「ねじれ議会」の組合わせで、この場合は、大統領と政党が違うの野党支配の議院が、大統領を牽制する重要な役割を担うことになります。

現在も、大統領が共和党、上院が共和党、下院が民主党という「ねじれ議会」のパターンになっており、下院がトランプ大統領の暴走を食い止める役割を果たしています。

議会とパワーバランス

例年と同様に、今度の11月の選挙でも、大統領、上院の3分の1、下院の全員が改選対象になっており、新型コロナ問題で有権者の不満も溜まっているので、ドラマティックな展開になることが予想されています。

まず大統領については、民主党のバイデン氏が9ポイント差で、トランプ氏を引き離しているので、そういう意味では、民主党は議会選挙で厳しい戦いを迫られる可能性があります。なぜなら、大統領と議会全体が民主党一色になる事態は、伝統的な保守派の有権者が容認しないし、中道派からも警戒されるからです。

ただ、バイデンが大統領になり、仮に上下両院が共和党で押さえられた場合も、それほど深刻な事態にはならないと考えられています。

なぜなら、バイデンがもともと上院の重鎮で、議会に人脈が張り巡らされており、議会の実務を知り尽くしているので、国政が止まるような事態は回避できると期待されているからです。

逆に、トランプが再選され、上下両院が民主党に押さえられた場合は、大統領の弾劾(辞任要求)が改めて持ち出され、国政が混乱する可能性があります。

そのようなわけで、個別のパワーバランスの組み合わせをシミュレーションすると、以下のようになります。

  1. 大統領:バイデン(民)、上院、下院ともに民主党のケース: スムーズな国政運営が期待できるが、共和党支持者の不満の行き場がなくなり、地方などで保守派の社会運動が起きる可能性がある。
  2. 大統領:バイデン(民)、上院、下院いずれかが民主党のケース: 議院のいずれかが共和党の意向を代表する調整弁となり、最も円滑な政権運営が期待できる。
  3. 大統領:バイデン(民)、上院、下院ともに共和党のケース: 大統領の政策が、ことごとく議会で阻止されるが、何とか最低限の政権の政策は実行できる。
  4. 大統領:トランプ(共)、上院、下院ともに共和党のケース: 現実的には実現可能性が極めて低い。仮に実現した場合、人種暴動などが収拾できなくなり、国内外で混乱が生じる恐れ。
  5. 大統領:トランプ(共)、上院、下院いずれかが共和党のケース: 現在と同じパターン。いままでの4年が、もう4年繰り返されるということ。国内外が疲弊する。
  6. 大統領:トランプ(共)、上院、下院ともに民主党のケース: 大統領の弾劾が再提議され、国政が停滞、混乱する可能性がある。

上記のうち、今のところ可能性が高いのは、2のパターンではないかと思います。2年前の選挙では、共和党は上院も民主党に取られそうになったくらいで、「トランプを擁護する共和党」の評判は良くないので、3の可能性は低いからです。

しかし、だからといって1のパターンは、前述の通り、保守寄りの有権者が容認するものではなく、2が妥当な落とし所になると考えられます。

議会は予算権を握っているので、米経済に重大な影響を及ぼします。そして、民主党と共和党では、経済運営に対して考え方に根本的な違いがあり、これが米経済の行方を左右するので、次回はこの点を掘り下げて考えたいと思います。

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