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香港問題における「二重のねじれ」

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香港では、今月からいわゆる「国家安全維持法」が施行され、中国政府が一段と締め付けを強化しています。

新型コロナ問題が大きくなる前、連日、反政府デモが報じられていた昨年末までは、香港の巨大な経済利権ゆえに、中国政府が妥協して、この問題はソフト・ランディングするかと思われましたが、もはやそうした希望も潰えたように思われます。

しかし、香港問題を、台湾、南シナ海などにおける中国の一方的な膨張政策の一環として捉えることは誤りです。

なぜなら、香港には、他の地域にはない「二重のねじれ」現象とでもいうべき固有の問題があるからです。

これがある意味で、中国政府の主張にも一定の正当性を与え、また西側諸国の主張にも正当性を与え、事態を複雑にして、問題の解決を困難にしています。

以下に、この「二重のねじれ」問題について、一つひとつ解き明かしていきたいと思います。

植民地時代の遺産「一国二制度」

「二重のねじれ」の一つ目のねじれは、香港がもともと英国の植民地だったために、ここに一国二制度という特殊な統治体制が敷かれていることです。

香港の一国二制度というのは、中国国内において、香港だけに特別な自治権を与え、ここだけ例外的に、自由度の高い統治制度を設けているというものです。

こうした二重基準は、もし当事国が納得して、自主的に採用しているなら何の問題もありません。しかし、香港の場合、植民地制度の名残りと、西側諸国や国際金融界からの圧力のために、中国がいやいや黙認してきたわけで、正当性に疑義があります。

本来であれば、多少の混乱があっても、実力を行使して一国一制度に統一すべきです。それが国家主権というものです。

現状は、明らかな植民地時代の名残りであり、現代の国際秩序のスタンダードから見れば、完全に異常な状態にあります。

しかし、確かに異常なのですが、この異常事態が正当化されざるを得ない事情があります。それが二つの目のねじれの問題です。

超大国が一党独裁制を維持する悪影響

二つ目のねじれは、中国が今も時代錯誤的な一党独裁体制を敷き、結果的に国民の人権を尊重しようとしていないことです。

もし中国が、世界の片隅の小さな開発途上国であれば、国際社会への影響はそれほど大きくありません。

しかし中国は、人口で世界第一位、経済力で第二位の超大国です。しかも、経済は市場経済化しており、中国経済は世界中に張り巡らされたサプライ・チェーンの要になっています。

こういう圧倒的な存在感と影響力を持つ大国が、一党独裁体制を敷いて、国民の人権を尊重していないでいることは、国際社会からすれば、とても看過できないことです。

なぜなら、大国というのは、その政治と経済の力学から、おのずと他の国々を自らの勢力圏に組み込んでいく作用を持ち、結果的にその国の固有の価値観を周囲に浸透させていくからです。

つまり、はっきり言えば、中国も自らの勢力圏を拡張するとともに、その人権に対する特殊な考え方や統治制度を、結果的に周囲に浸透させているということです。

こうした懸念があるから、西側諸国は、香港が中国の現行制度の中に飲み込まれてしまうことに頑強に抵抗し、一国二制度を必死に支えているわけです。ここに、例外的に、一国二制度の維持といった異常事態が正当化される理由があります。

世界経済の分裂を避けるために

いまや米中の対立は、もはや隠しようがないほど、はっきりした様相を呈してきました。このままだと、世界は米国の経済圏と、中国の経済圏の二つに分裂し、その中間にいようと踏みとどまる国も、いずれどちらかに飲み込まれていくでしょう。

そして、このように世界が二つの経済圏に分裂すれば、世界の経済規模の総計は縮小し、世界経済に対する投資の機会と利益も縮小していきます。つまり、私たち投資家も損害を受けるわけです。

香港で「国家安全維持法」が施行されたことは、世界経済分裂の加速要因の一つになりました。ですので、西側諸国がこの問題にどういう対応を取るかは、世界経済の今後のあり方に影響を与えます。

現在、西側諸国は「二つ目のねじれ」だけを取り上げて、中国政府を非難しています。しかし、香港問題の起源は「一つ目のねじれ」にあるので、こちらを放っておいて「二つ目のねじれ」だけを議論しても、「一つ目のねじれ」の結び目がますますきつく締まっていって、解決が遠のくだけです。

「二つ目のねじれ」を解くためには、まず「一つ目のねじれ」を丁寧に解きほぐさなければなりません。

事態は徐々に厳しくなってきましたが、西側諸国には、大局を見据えた歴史観のあるスケールの大きい外交が求められているように思います。

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