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ポンペオ演説、中国政府と中国国民の分断を狙う

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米中関係は、互いに在外公館の閉鎖を要請し合うなど、だんだんと緊張の度を高めています。

そんな中、ポンペオ米国務長官が、同盟各国と中国の国民に向けて、中国政府に包囲網を築くような新たな同盟を構築するよう訴えかける演説を行いました。

画期的なポンペオ演説

今回の演説の重要な点は2つあります。

一つは、自由と民主主義を標榜する国々は、米国とともに、改めて中国に圧力をかける新たな同盟を築き上げようではないかと呼びかけている点です。

二つ目は、中国国民を中国政府とはっきりと区別して、中国国民を「自由を愛する国民(a freedom-loving people)」という異例の表現を使って持ち上げ、中国国民は一つ目のポイントである新同盟の一員であるかのようにスピーチの全体を構成している点です。

一番目の点も相当に踏み込んだ発言ですが、二番目の点は、意識的に中国政府と中国国民を分断し、互いに敵対させることを狙っており、今までにないアプローチと言えます。

Divide and Rule(分割して統治せよ)という格言がありますが、米国がまさにそういう構想を持っていることが明らかになったと思います。

確かに中国の問題は、中国の国民でも企業でもなく、政府にあります。政府が、対外的な膨張政策を取ったり、テクノロジーの剽窃を図ったり、世界レベルで共存共栄のハーモニーをかき乱しているからです。

ですから、今回のように中国政府に的を絞った発信は高く評価できます。

キューバ危機に学ぶ

ただひとつ、ちょっと気になった点があります。それは特定の人を標的にして、個人攻撃をするのはどうかということです。

今回の演説では、ポンペオ氏は習近平国家主席のことを「破綻した全体主義の信奉者( a true believer in a bankrupt totalitarian ideology)」と強い表現で非難しました。

たしかに習主席は、非常に独裁的な人物だという評価がすでに固まっていますが、他方でこの人は、若いときに米国にホームステイをした経験があり、国家主席に就任する直前には、昔の滞在先を再訪して、受け入れ先の一般の米国人家族と和やかに歓談したような意外な一面もあります。

最近、キューバ・ミサイル危機を扱った『決定の本質(Essence of Decision)』というグレアム・アリソンの著作を読み直す機会がありました。

この中では、米政府がソ連のフルシチョフ総書記を非難しつつも、これほどまでに非常識な行動を取るフルシチョフは、これを本気でやっているのだろうか、もしかしたらフルシチョフはソ連指導部の保守強硬派に押し切られて、このような異常な行動をとっているのではないかといった慎重な分析をして、危機を打開していく様子が描かれています。

ここには人類の滅亡という絶体絶命の危機の中で、非常に冷静に、丁寧かつ慎重な分析を重ねるケネディ政権幹部の高度な知性が描かれています。危機を引き起こしたフルシチョフを非難するのではなく、ミサイルの撤去という目的に全力を傾注し、目的を達成したのです。

複雑な中国政府の意思決定機構

中国の最高指導部は、複雑な権力構造になっていて、時代によっては、一部の政権OBなどの「長老」が、国家主席と同等、もしくはそれ以上の隠然たる権力を振るうことがあります。

習主席も、重要事項の決定にあたっては、公式の会議に諮る前に、「北戴河会議」と呼ばれる非公式の長老会議の場で事前の根回しをしていることが以前より知られています。

この北戴河会議は、胡錦濤時代はいったん廃止されて、習政権になってから再開されたと言われていますから、独裁的なカラーを呈している習氏が、実は長老には言いたいことが言えない立場に置かれていることも考えられます。

事実は分かりませんが、習主席の独裁的な統治スタイルが、この人の個人的な意思によるのかどうかは断定できない要素があります。ですから、米国政府もケネディ政権がキューバ危機を乗り切ったときのように、知性と想像力を発揮して、米中冷戦に臨んでほしいと思います。

統治制度を標的にして早期収束を

中国政府の問題の多い内政と外交、そして何よりもその発信源になっている独特な一党独裁政は、米国だけでなく、それ以外の世界各国、そして中国市民にとってもマイナスの作用を及ぼしていますから、今回のポンペオ国務長官の演説は評価できます。

ただ、個人攻撃をするのではなく、制度や政策の批判に的を絞ったほうが、事態を早期に解決に導く上ではよかったかもしれません。

個人攻撃は、話としては分かりやすいのですが、不毛な非難の応酬を招きがちであり、そうなると米国も自身の国益を毀損し、時間をムダにします。

私は、もはや米中冷戦は避けようもないけれども、できるだけ早く終わってほしいと思っています。

なぜならば、米中冷戦は、世界の二大経済圏を分裂させ、両者が足の引っ張り合いをして、互いに疲弊し、互いに損害を与えあって、世界経済の生産力の総和を大きく削ぎ落とす結果になるからです。

これは特に、インデックス投資のような長期投資にとって大きな損失になることは言うまでもありません。

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