かつて先進国だった中国
こんにちは、マーケット・ラッキーです。
世界史を学べばはっきり分かることですが、かつて中国は世界一の先進国、経済大国でした。
大航海時代前のヨーロッパ諸国は、それに比べれば遥かに後進国であり、中国を訪れた当時のヨーロッパの人々は、中国の先進性に驚愕したことが歴史の書物にも書き記されています。
しかし、18-19世紀と時代が下り、アヘン戦争の頃には、欧米各国の軍事力の優位性が際立つようになり、中国は一気に列強の食い物にされ、その光栄は地に落ちてしまいました。
当時の中国の社会層の味わった屈辱は、想像に余りあるものがあります。
そして、現代中国の不幸は、この正当な怒りが、運命のいたずらのように共産主義と結びついて、国家発展のエネルギーに結晶してしまった点にあります。
独裁政治で自由経済を構築
20世紀に入り、中国は、欧米の自由主義陣営に支援された国民党と、ソ連の共産主義陣営に支援された共産党との内戦状態に陥り、最終的に共産党が勝利しました。
その後の中国の歩みは、他に類を見ないユニークなものでした。
政治は、共産党の一党独裁主義を貫いてきましたが、20世紀末には、経済体制は市場経済を志向し、政治は一党独裁制、経済は自由主義的な市場経済というハイブリッド型の統治体制を採用したのです。
そして、この不思議なハイブリッド型の統治体制のもとで、政府は公的権力を巧みに利用しながら、経済を半ば強制的に一気に押し上げて、今の中国の繁栄を短期間のうちに築き上げました。
そして中国は、この経済的成功に満足するに留まらず、かつての中華帝国の栄光を見据え、「一帯一路」のような政策構想を利用しながら、アジアやアフリカの途上国にアプローチをかけて、勢力圏を拡大する試みを始めたのです。
途上国の中には、独裁制の国も多く、独裁政治で経済的成功を実現した中国に魅力を感じ、その後に続こうする国もあり、このアプローチが歓迎される場面も多々見られました。
米国の対中政策は、伝統的な「封じ込め戦略」
他方、近年米国では、トランプ大統領が、就任当初から、中国に対して敵対的な貿易政策を取り、徹底的かつ戦闘的とも言える中国潰しの政策をとってきました。
そして、こうした反中的な政策をとってきたのは、この中国の「政治的に独裁制、経済は市場経済」というハイブリッド型の統治手法が、国際社会に浸透するのを警戒したからでした。
米国政府は、トランプ政権以外の関係者も、この対中政策には合理性があると考えているフシがあります。
なぜなら、こうした動きを放置すると、結果的に国家の利益のために個人の人権を踏みにじるような社会的価値観が、自国周辺にも浸透してきて、国際社会がそれに飲み込まれてしまうと考えているからです。
この背景には、かつて米ソ冷戦において、多くの中小国家が共産主義の波に飲み込まれ、多くの人命が失われるとともに、大変な経済的損害を受け、米国も多大な犠牲を払った教訓があります。
その意味で、いまの対中政策が、かつて米国がソ連に対して取った「封じ込め戦略」と酷似しているのは偶然ではありません。
「米中冷戦」は、勝負がつくまで続く
ですから、現在の米国の対中政策は、過去の政策と一貫した連続性があり、決して突飛なものではありません。
そして、この政策の根底には、果てしない自由への希求、人権擁護といいった米国の建国理念があり、この政策の方向性は今後もブレることはなく、後継の政権にも受け継がれていく可能性が極めて高いです。
そのため米中関係の緊張は、米ソ冷戦のときと同様に、はっきりした結果が出るまで続くものと思われます。
ですので、外国株投資の視点からは、この大国同士の対立激化と、最終的な勝ち負けが、自分の資産運用にどういうインパクトを与えるか、ポートフォリオの構成等において、事前に考慮に入れておく必要があります。