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書評:株で富を築くバフェットの法則 ロバート・G・ハグストローム

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株で富を築くバフェットの法則[最新版]---不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2014/4/25

著者は、バフェットの研究家で、投資銀行のストラテジストの経歴を持つ実務家です。そのため、バフェットの投資原則だけでなく、投資手法のテクニカルな点についても深彫りしています。

本書の言っていることを、一言でいうと、バフェット氏は、アクティブ運用とも、パッシブ運用とも違う「フォーカス運用」が最大のリターンを生む最善の投資方法だと考え、これを実践して比類ない結果を出している、ということです。

フォーカス運用とは、おもにバリュー投資の視点から、事業内容は良いが株価が安く据え置かれている企業を厳選して絞り込み、その株を買って長期保有し、数十年という長期スパンで結果的にリターンを最大化する手法です(第5章)。

ちなみにアクティブ運用は、優良投資先を絞り込むところまでは似てますが、短期的に売買を繰り返すので、一見儲かっているように見えて、実は手数料と税金でガッツリ利益を削られてしまいます。

他方、パッシブ運用は、長期投資である点は似てますが、インデックス投信に見られるように分散型投資ということで、結果的に投資先が玉石混交になるので、利益を最大化できない弱点があります。

そのため、バフェット氏は、本当に優れた事業を行っている企業の株を厳選し、それを安値で買い、数十年のスパンで保有し続けるフォーカス運用が最善の投資方法だと結論づけ、それを励行して、結果を出しているわけです。

確かに、この方法は最善です。でも、私なんかは「本当に優れた事業を行っている企業の株を安値で買う」ことができないから、そもそも困っているのです。

最近、偶然か必然か、ベテランのプロの投資家の二人の方が、まったく別の場所で、まるで申し合わせたように、「バリュー投資は正論だが、本当に難しい。自分はほとんど諦めている。グロース投資だったら辛うじて何とかなるので、自分はこれでやっている」という話をしていて、言葉が出ませんでした。

フォーカス投資というのは、実質的にバリュー投資の亜流だと思うのですが、バフェット氏の手法は本当にロジカルで腹落ちするものの、実行が大変難しいのです。

これはおそらく、バリュー投資、フォーカス投資には、会計の深い知識が必要だからかもしれません。そして、表面的な知識ではなく、おそらく会社経営の実務経験を伴う会計の深い知識が必要であるように思われます。

本書では、バフェット氏が株を買う際、株価よりも、事業の中身を見て、経営に参加すべきかどうかという観点から、株を買うかどうか判断しているということにも触れています。つまり、投資家というより、経営者として株を買っているということです。

バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイが、もともと紡績会社だったことはよく知られていますが、買収直後には、バフェット氏は同社の経営もしていました。そのため、バフェット氏には投資家だけでなく、経営者の実務経験もあるのです。

一般的に言って、「何かを知っている、理解している」ということは、机上の学習でそのことを知っているのか、もしくは実務経験を通して、その知識が血肉化しているのかということでは、知識の深みに天地ほどの開きが生じます。

バフェット氏の独特の投資センスは、もちろん日々の研究調査の蓄積もあると思いますが、この経営の実務経験によるところも大きいと思いました。常人には真似できないところが多いのですが、成功の謎が少し解けたような気がしました。

株で富を築くバフェットの法則[最新版]---不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2014/4/25

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