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書評:Market Hack 流 世界一わかりやすい米国式投資の技法 広瀬隆雄

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MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法 Kindle版

今やネット上で米国株随一のインフルエンサーとなった広瀬隆雄氏、通称じっちゃまですが、私はこの本を2016年に買い、以来ずっと愛読し続けてきました。

もし購入後すぐに、この本に書いてあることを忠実に実行していたら、真面目な話、私はもうリタイアできていたと思います。自分の実行力のなさが悔やまれます。

きょうは、そんな米国株投資家の多くに愛され、信頼されている広瀬隆雄さんの著作について書いてみたいと思います。

本書の概要

広瀬さんご自身も時々言っておられるように、本書は今から7年前の本なので、一部に古くなってしまっている箇所もあります。しかし、米国株取引の行動基準について解説している第一章「Market Hack流 投資術」の内容は普遍性があり、極めて価値の高い情報となっています。

その第一章の要点をここで少しご紹介しますが、内容としては個別株を選定、売買する上での基準になります。この基準は、「決算の確認」と「キャッシュフローと利益の確認」という二つの基準から成ります。

基準1:決算の確認

第一の基準は、四半期決算において、EPS(一株当たり利益)、売上高、ガイダンスがすべて、事前コンセンサスを上回っているということです。

ここで大事なのは、比較対象は、直近の過去の決算数値ではなく、予想値、つまり事前コンセンサスを上回るという点です。全てパーフェクトに上回ったら買い、一つでも取りこぼしがあったら売りです。

ガイダンスは、会社側の予想値のことで、これもアナリスト側のコンセンサスを上回ることが絶対条件になっています。

また、上場したての会社や若い会社は、EPSがマイナスになることもありますが、ここもマイナスかどうかは関係ありません。とにかく、事前コンセンサスを上回ったかどうかという一点だけを見ます。

あと注意点を述べておくと、この決算の数値については、広瀬さんは今もTwitterやnoteで頻繁に発信しておられ、広瀬さんの数値と他媒体の数値が食い違うことがありますが、広瀬さんの数値の方が正しいです。

なぜなら、広瀬さんの数値は、財務諸表を見て、名目値から特殊な要素(ノイズ)を除去した実質値になっているからです。私は、このノイズ除去の技術に、果てしのない付加価値を感じています。決算の数字は死活的に重要なのに、この作業を正確にできる人がほとんどいないからです。

なお、事前コンセンサスが比較対象になる理由は、効率的市場仮説に基づき、市場はすべての予測や期待を織り込んでいるという前提に立って、実績を評価するからです。

基準2:キャッシュフローと利益の確認

第二の基準は、営業キャッシュフロー(CFPS)が、純利益よりも大きく、なおかつ年々増えているということです。

まず、営業キャッシュフローが純利益より大きいことを確認する理由は、利益は粉飾できるが、現金は粉飾しづらいため、ここをチェックすると粉飾決算を見抜くことができるからです。純利益のほうが大きければ、これが粉飾されている可能性が高いということになります。

つまり、ここは、先ほどのEPS(一株あたり純利益)の数字が本当に正しいのかチェックする目的も含まれています。

そしてさらに、営業キャッシュフローが、年々増えているかどうかも確認します。ただし、ここは広瀬さんの説明を見ている限り、先ほどの決算数字が上がっていることの確認よりも、相対的なウエイトは低いようです。

なお、これら2つの基準の実際の適用方法として、広瀬さんは、上場から年月がたったベテランの銘柄では、決算とキャッシュフローの両方が大事と言っています。ただ、決算が一回コケても、キャッシュが安定している限り、ベテランの銘柄ならば、次回パーフェクトを回復できたら、あらためて買い直しても良いといったことを言われています。

そして、IPOしたばかりのような若い銘柄では、決算が死活的に大事と言っています。「若い銘柄は、一回コケたら、しばらく様子見をしたほうがいい。一回コケたあと、ずっとコケ続けて、そのままダメになる銘柄もたくさんある」といったことを言われ、若い銘柄は決算を厳しく見ることを推奨しています。

広瀬さんは、上記二点、とくに決算については、今もあらゆるメディアで繰り返し重要性を強調しておられ、ご自身を決算原理主義者とまで自称しておられます。

ちなみに、このルールは広瀬さんが考案したルールではなく、ウォール街のルールだと言っておられ、確かに英語媒体含め、あちこちで確認できる内容なので、この点は間違いないと思います。

本書では、このほか短期トレード、長期投資のルール、分散投資、セクター・ローテーション、新興国株の話などにも触れています。

これらの内容は、現在、広瀬さんが運営しているメディアで発信している内容と重なる部分もありますが、米国株取引の原則や手法が体系的、包括的にまとめられており、そこに本書独自のバリューがあると感じています。

広瀬氏の他の媒体について

広瀬さんは、本書をアップデートする主旨も含め、現在、多岐にわたる媒体で、ほぼ毎日、情報発信しておられます。

代表的なものは、Twitter、YouTube、noteで、ほかにも楽天証券やSBI証券、ZAI onlineにも頻繁に投稿しておられます。

Twitter
https://twitter.com/hirosetakao

現役時代のネットワークも駆使しているので、貴重な情報がマスメディアよりも早く見れる。

YouTube
https://bit.ly/2GSpqie

1回あたり3時間を超える懇切丁寧な講義。質問にも答えてもらえる。

note
https://bit.ly/373jg9Q

決算の最新情報などが発信される。啓蒙的なコンテンツもあり。

昔のブログ
http://markethack.net/

昔の投稿だが、中身が濃く、今でも有用。広瀬さんの哲学(考え方)もわかる。

ちなみに、Twitterは失礼なコメントは一発でブロックされます。

これらのメディアをフォローしている人の多くは、おそらく仕事(収益)目的でフォローしていると思いますが、ときどき遊びのような軽いノリで広瀬さんに絡んでしまう人がいて、瞬殺でブロックされるのを目にします。

広瀬さんをフォローしている人の多くは、同じ気持ちだと思いますが、私は広瀬さんを上司、トレーナーと見なして接しています。礼節を保ちつつ、学ばさせていただき、時に、見て盗むという姿勢です。

広瀬さんは、米国の超一流の投資銀行で長年、第一線を歩んでこられました。こういう方が、自分の知見を無料、もしくは廉価で提供してくださっているのは奇跡のような話です。

もちろん、広瀬さんは全ての情報発信を収益化されているようなので、こういう情報発信は広瀬さんにとっても面白いのかもしれませんが、あのような質の高い情報をこれほど手軽に享受できることは大変ありがたいことです。

フロリダのパンハンドルで、米国人の奥様と悠々自適の暮らしをエンジョイされているとのことですが、今後も末永くお世話になれればと思っています。ただ、私も広瀬さんの情報に依存しっぱなしなので、できるだけ早く独り立ちできればとも思っています。

MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法 Kindle版

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