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CASE革命は自動車産業を変革・再編する <書評:2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 田中道昭>

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2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 (PHPビジネス新書) (日本語) 新書 – 2018/5/18

最近、テスラ(TSLA)の株が乱高下して注目を集めたこともあり、米国株を中心に、自動車産業への投資を考えるようになりました。

具体的には、電気自動車(EV, Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV, Fuel Cell Vehicle)の関連企業への投資です。そうしたことを考えながら本書を読んだのですが、この業界は大変なことになっているという驚きを覚えました。

具体的には、今後はクルマの概念自体が変わってくる、そのため自動車産業に投資をするためには、IT産業、エネルギー産業など、幅広い射程で、関連業界の全体を俯瞰しないと、的確な投資はできないということに気付かされました。

きょうは本書の概要をご紹介するとともに、今後の自動車業界への投資について考えてみたいと思います。

本書の概要 

本書を概要を一言でいうと、「自動運転とライドシェアの需要拡大により、今後の自動車というものは、その概念自体が変化し、自動車産業も大きく変革・再編されていく」ということです。

現在、自動車産業には、CASEとMaaSという大きな変革の波が押し寄せいてきています。

CASEとは、Connected(インターネットに接続)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)の頭文字で、これらの要素が、相互に関わり合いながら、自動車に導入されていく変革のことです。

MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、公共交通機関、クルマ、自転車などを一つのまとまった移動サービスと捉え、出発地から到着地までの移動を、クラウド・コンピュータを介してシームレスな形で(つなぎ目のない形で)、ヒトの移動を最適化する概念です。

本書は、自動車にこうした変革の波が押し寄せてきているので、自動車に関わる製造とサービス提供には、自動車メーカーだけでなく、IT企業、電気通信企業、半導体企業、エネルギー関連企業などが、別の主要アクターとして新たに加わっていることを説明しています。

そして今後は、自動車の製造とサービス提供をめぐって、多様な異業種間で激しい主導権争いが展開されていくだろうと述べています。

具体的には、将来の自動車会社というものは、必ずしも自動車「メーカー」が主役になるとは限らず、自動運転のプラットフォーム部分を提供するIT、電気通信企業や、ライドシェア・サービスを提供するITサービス企業などが主役になる可能性があるということです。

ちょっと分かりにくいですが、別の例として挙げると、「携帯会社」というと、人によってはdocomo(通信会社)を思い浮かべたり、Apple(企画・設計会社)を思う浮かべたりしますが、製造元のホンハイを思い浮かべる人はいないということを考えていただくと、どういう意味かお分かりいただけるかと思います。

クルマとは何か?

本書を読んで思ったのは、もはやクルマの概念が変わりつつあるということです。とくにMaaSの進展によって、今後、クルマは「モノ」から「サービス」に変化していくように思いました。

具体的に説明します。たとえば、今までは多くの人が、愛車の質感、デザイン、乗り心地などに深い思い入れを持ち、クルマをモノとして認識してきました。

しかし、今後、いままでよりもコスト的に安く、多様なクルマを移動サービスとして利用できるようになったら、クルマは所有するモノではなく、利用するサービスとして認識されていくようになるのではないかということです。

つまり、現在起きている変革の波は、クルマの概念を変えるということです。

クルマを支配するのは誰か?

このようなクルマの概念の変化に直面すると、自動車産業への投資も、自動車メーカーだけには限定されなくなってくることに気付かされます。

具体的に言えば、自動車産業の未来に投資するためには、ハード部分を作っている自動車メーカーだけでなく、自動運転の基幹技術を支えるグーグルに投資するとか、ライドシェア・サービスを提供しているリフト(LYFT)に投資するとか、水素ステーションのサービスを提供しているプラグパワー(PLUG)に投資するとか、産業のエコシステム全体を俯瞰して、投資先を決める必要があるということです。

どの業界、どの企業が、自動車産業のエコシステムを支配しているのか、どこに利益が集約されていくのかといったことを、柔軟な頭で考えていかなければなりません。

本書を読んで、今後はクルマの概念が変わること、関与するアクター、主役が変わること、そのため投資先も変わることがよく分かりました。自動車産業への投資を考えておられる方には、是非おすすめしたいと思います。

2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 (PHPビジネス新書) (日本語) 新書 – 2018/5/18

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