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新型コロナ対策、情報集約の重要性

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政府の観光支援事業「Go To トラベル」が今日から始まりました。ここに至るまで、開始時期の前倒し、東京都を基点とする旅行には適用しない、この適用除外に関する補償はしない、いや補償はするなど、バタバタの展開がありました。

しかし、このドタバタ劇を批判することが、この記事の目的ではありません。

そうではなくて、きょう考えてみたいことは、新型コロナ対策のための判断材料を精緻化する努力をしないと、何度でも同じことが起きるので、ぜひその取り組みを強化してはどうかということです。

なぜならば、正確な判断材料を整えることに、今後の経済復興のカギが隠されているからです。

新型コロナの問題は、究極的には「2つの脅威」のバランスをどう取るかという問題です。

一つは、対策を徹底しないと、感染して死に至るという生命の危機に関する脅威です。

もう一つは、あまりに対策を徹底しすぎると、経済社会活動が止まり、経済的困窮が生じるという金銭に関する脅威です。

ですので、新型コロナ対策を的確に行うためには、この生命への脅威と、お金への脅威の「損益分岐点」を正確にはじき出すことがどうしても必要になります。

しかし、現時点ではこの計算を正確に行う上での判断材料がありません。今回の「Go To」のドタバタ劇は露呈したのは、まさにこの点です。

そういうわけで、きょうはこの問題を打開するための3つの切り口を考え、試論的な一つの結論を導きたいと思います。

ワクチンと治療薬の開発推進

世界には恐るべき伝染病や感染症がたくさんありますが、私たちがそれらに怯えずに日常生活を送れているのは、そういう病気にワクチンや治療薬があるからです。

つまり、新型コロナウイルスが、経済社会活動にこれほどまで大きなダメージを与えている理由は、これに対する有効なワクチンや治療薬がないからです。

世界的に見ると、米国を中心に新型コロナのワクチン開発は着々と進んでおり、正式な承認が下りなくても、緊急使用許可(EUA)を出す段取りもつけるなど、市場への導入準備がどんどん進んでいます(参考:新型コロナウイルスのワクチンと治療薬 開発状況まとめ)。

日本も、政府がアストラゼネカ(AZN)と交渉に入るなど、先行する海外治験薬の国内導入を試みていますが、私はもっと手を付ける範囲を広げて、多くの複数の関係企業と同時に交渉をすべきではないかと思っています。

ワクチン開発は、接種対象が国民の過半数の健常者になることから、承認プロセスは非常に厳しく、たとえ数十の治験薬が臨床治験プロセスに入っていても、それが全滅することもあります。

この点を考えると、一社だけと交渉するのはあまりにリスキーであり、厚労省と外務省の職員を駆り出して、できるだけ多くの関係企業と交渉すべきだと思います(報道されていないだけで、もしこういう取り組みをすでにやっているのであれば、何も言うことはありませんが)。

このことは、治療薬にも言えることです。そして、これら医薬品の導入を図り、またその過程で開発状況に関する正確な情報を入手することは、今後の先行きに関する視界を劇的に改善し、新型コロナ対策を打つための正確な判断材料を得ることにつながります。

新型コロナの検査方法の改善と普及

現時点では、新型コロナウイルスの検査方法としては、感染したばかりの人を特定するPCR検査と、感染歴のある人を特定する抗原検査と抗体検査があります。

PCR検査は、陽性者の70%しか陽性と特定できない限界があります。つまり、残りの30%の人は陽性なのに陰性と診断され、そのまま何の対策もないまま、街なかに放り出されているということです。

さらに、抗原検査と抗体検査の正確性は、これより低いとされています。ただ、PCR検査と違い、医療機関を訪問しなくても、自分で検査できる場合もあります。

こうした概観を眺めますと、検査の正確性を上げること、そして特にPCR検査については、医療機関でなくても検査できるような体制を構築することが求められていることが分かります。

自分が感染しているのか、もしくは誰が感染していて、感染していないのかということがもっとはっきりわかれば、経済社会活動の再開を図る上で、もっと正確な施策が打てるようになります。ちなみに米国株投資の観点からは、この新型コロナウイルス検査の分野では、クワイデル(QDEL)、アボット(ABT)などのメーカーが注目されています。

新型コロナの統計整備

私は都内に住んでいるのですが、当初は、7月の100名、200名といった感染者数の増加状況を警戒心を持って見ていました。

しかし、検査件数がこれ以上の割合で増えていること、重症化件数が低く抑えられていることを見て、これは大したことはないのではないかという印象を持つようになりました。

しかしその後、「Go To」で東京基点の旅行が適用除外になるといった引き締めがあったので、やはり7月の増加傾向は警戒すべきものなのかもしれないと認識を新たにしました。

ただ今もって腹落ちしないのは、一体どの程度、事態が深刻なのか正確に分からないという点です。つまり、具体的に言うと、統計の読み方がわからない、統計の読み方を解説してくれる専門家がいないということです。

4-5月の段階では、「8割おじさん」という渾名のついた北海道大学の西浦博教授という人が、メディアにたびたび出て、次々と発表される統計の意味を丁寧に解説してくれていました。

しかし、その後、政府が緊急事態宣言や自粛要請を出す上で、結果的に強い影響力を発揮したためにバッシングを受けることになり、その後はメディアへの露出が極端に減りました。

そのため、最近は統計だけが出て、それを解釈するプロがいないという状態が続き、現状の数字がどういう意味を持つのか誰にもわからない状態が続いています。

私は今回の「Go To」のドタバタ劇についても、この「統計の読み方が分からない」ことに、原因の大半があったのではないかと思います。

今の時点で、西浦先生がメディアに再登壇するのは大変勇気がいることだと思いますが、他の同僚の先生と一緒でも良いので、国民一般に新型コロナに関する統計の読み方を改めて教えてもらいたいと思っています。

新型コロナ対策のための正確な判断材料を得るためには、おそらくこの「統計の解釈」を正確に行うことが一番大切なのではないかと思っています。

新型コロナ対策ポータルサイトの立ち上げが望まれる

新型コロナ対策は総力戦です。

そのため、正確な判断材料を得たり、それを活用する作業が、政府や、特定の企業・個人に偏っていては、労力にロスが生じたり、宝の持ち腐れになる恐れがあります。

つまり、こうした判断材料をできるだけ多くの人が等しく共有し、さらにそうした判断材料の獲得や整備の作業も、できるだけ多くの専門家を上手に巻き込む必要があるのです。

そのために一番良い方法は、「新型コロナ対策ポータルサイト」のようなものを立ち上げて、政府、民間、医療専門家などの有用な情報を横断的かつ民主的につないで、これらの情報をこのポータルサイトに集約することです。

具体的には、ワクチンや治療薬の導入計画、検査体制の最新情報、各種統計などの大事な情報を、全てここに集約して、政府、企業、医療専門家などに、どんどん情報を更新してもらうのです。

しかし大事なのは、このサイトの運営管理は、絶対に政府とかがやってはいけないということです。政府がサイトを管理すると、必ず時の政権の意向が入ってしまい、情報が中立でなくなるからです。

ですから、サイトの立ち上げと運営管理は、無名の有能な少人数の一般の方々に担っていただく必要があります。こういうサイトは、お金も権力もないが、才能とセンスだけはあるという有能な人が作らないと、誰も信用しません。新たなベンチャーが登場することを期待しています。

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