相場動向

米大統領選挙 その仕組みと注目ポイント4つ

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きょうから米民主党の党大会が開催され、ジョー・バイデン氏が民主党の大統領候補として、正式な指名を受ける見込みです。

そんなわけで、きょうは米大統領選挙の基本をおさらいして、今回の選挙の注目ポイントをチェックしたいと思います。

米大統領選の日程

米大統領選挙は9ヶ月に渡る長丁場ですが、全体を、予備選挙、党大会、本選挙の3つの部分に分けて考えることができます。

予備選挙(2月~6月)


各州ごと、各政党ごとに、予備選挙(primary)もしくは党員集会(caucus)をそれぞれ個々に実施して、各州の各政党の大統領候補を選びます。ここで選出された大統領候補の支持者は、「代議士(delegates)」として、次の段階である全国党大会に送り込まれます。

全国党大会(7月―8月)


各政党ごとに別日程で実施されます。ここでは、各党の大統領候補と副大統領候補が、予備選挙の「代議士」らによって選出、指名されます。すでに予備選挙で形勢は決まっているのでサプライズはなく、各政党の大統領候補のお披露目としての色彩が強いお祭りイベントです。

本選挙(11月3日)


一般有権者が投票し、次期大統領を決めます。詳しくは後述しますが、本選挙は間接選挙になっていて、有権者は結果的に選挙人団を選出し、その選挙人団が大統領を選出する仕組みになっています。

11月の本選挙の仕組み

大統領選の本選挙の最大の特徴は、間接選挙だという点です。今年は、11月3日に実施されますが、この1日に下記のことが行われます。

一般有権者は「選挙人」を選出

一般有権者は大統領候補に投票し、得票数を州ごとに集計します。ここでの注意点は、有権者は大統領候補に投票するのですが、結果的には、大統領ではなく、選挙人(団)を選出するという点です。

この選挙人団(electoral college)という人たちは、各州ごとに、各政党によって事前に指定されており、彼らは各政党の支持者です。そして、州ごとに、州の人口に従って定数が決まっています。たとえば、カリフォルニア州は55名、バーモント州は3名といった具合です。

まとめると、11月3日には一般有権者は大統領候補に投票するのですが、実際には大統領を選出するのではなく、「大統領を選出する選挙人」を選出することになります。

過半数を制した候補が選挙人団を総取り


有権者が投票した結果、その州で過半数を獲得した大統領候補は、その州の選挙人団を総取りします。つまり、たとえば共和党候補が、カリフォルニア州の得票で過半数を制した場合、共和党の選挙人団55名だけが、次段階の選挙人団による大統領候補の選出に参加でき、民主党の選挙人団55名は、全員その参加資格を失います。つまり、過半数を制すると、その州を総取りできるのです。

結果は得票数ではなく、選挙人の数で決定


上記から、実際に大統領を選出できるのは選挙人団なので、本戦の結果は、全国レベルの得票数ではなく、全国レベルの選挙人の数で決まることになります。

したがって、得票数で勝っても、選挙人数で負けると大統領になれないことが普通に起きます。実際、前回の選挙では、ヒラリー・クリントン候補は、全国の得票数で勝っていましたが、選挙人の数で負けたため、大統領になれませんでした。

最後の選挙人による投票は12月に実施されます。これで大統領選挙の結果が正式に確定するわけですが、各党に忠実な選挙人が反逆を企てることはないので、この正式な結果は、11月の本選と全く同じ結果になります。そのため、11月の本選の結果をもって、12月の選挙人団の選挙を待たずに、選挙結果が事実上確定します。

日本人から見ると不思議な制度ですが、この制度が憲法に規定されていることや、州権が強い米国の実態にマッチしていることなどから、変更される兆しはありません。

米大統領選 注目ポイント4つ

不況のときは現職が不利


大統領選挙のたびに言われることですが、不況のときは現職が負けることが多いです。具体的には、1980年のジミー・カーター氏、1992年のジョージ・H・Wブッシュ氏(父)が現職だったときがそうでした。経済への不満が、現職大統領にぶつけられるせいなのかもしれません。現在は不況の状態にあるので、トランプに逆風となっています。

9月7日のレイバー・デーから空気が変わる


米国の夏休みは、7月から9月第一週月曜のレイバー・デー(勤労感謝の日)までとされているので、その翌日から国民のセンチメントが切り替わると言われています。過去にも、ここを基点に相場の流れが変わることがあったので、この時期は緊張感を持って市場を眺めることが必要になります。

「不正選挙」疑惑で混乱か


前回選挙では、ロシアがサイバー攻撃などを利用して、米大統領選挙に不正に関与したということが言われてましたが、今回も米国の情報当局がロシアや中国の関与に懸念を表明しています。

また今回は、新型コロナ問題で期日前投票、郵便での投票が大幅に導入されることになったため、これにも不正の余地があるとして議論が起きています。一般に言われていることは、もしトランプが僅差で負けた場合、トランプが大暴れして選挙結果を認めず、米国が大混乱に陥るというシナリオです。

事前予想は当たらない


これは二つの意味があります。一つは、どちらが勝つか予想できないということです。よく言われることは、トランプの支持者は、トランプを支持していることを恥ずかしくて公言できないので、世論調査は当てにならないというものです。トランプは、統治能力には疑問符が付きますが、米国人のフラストレーションを上手に吸い上げる対人能力に長けており、侮れないところがあります。

もう一つは、トランプが再選されたらこうなる、バイデンが選出されたらこうなるという選挙後の経済予測などが当たらないという意味です。4年前、トランプが選出されたとき、多くの専門家が言ったのは、これで米国はおしまい、相場も総崩れということでした。しかし、実際に起きたことは4年に渡るトランプラリーでした。

きょうのところは以上となります。選挙の直前直後の注目ポイントは、上記4点ですが、中長期の注目ポイントは、大統領の健康問題だと思っています。これについては、先日の投稿「高齢化問題:古くて新しい投資アジェンダ」で書きましたが、今後、前代未聞の問題が起きる可能性も十分にあると思っています。

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