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米国のWHO脱退、市場に長期的な下押し効果か

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以前から脱退を表明していましたが、米国のトランプ大統領が、7月6日、WHO(世界保健機構)から脱退することを国連側に正式に通告しました。来年同日に脱退が発効します。

これは想像以上に、大きなマイナス影響を世界経済に与える恐れがあります。

なぜならば、現在の新型コロナウイルス問題のような感染症対策は、国境を越えた対策が必要で、そのためには国際機関であるWHOのような組織に、米国、中国、EUなどのプレイヤーが積極的に関与して、グローバルな政策協調を行う必要があるからです。

トランプ大統領の決断は、新型コロナ対策を世界レベルで大きく後退させたと言わざるを得ません。世界経済にもマイナスの影響を与え、市場にも中長期的に重い下押し効果を生じるように思います。

その意味で、この問題は、国際機関の問題ではなく、世界経済の問題です。

WHO脱退の動機

脱退に至った動機は、WHOが中国寄りで、WHOに加盟していることが、米国の国益に反するからということだとされています。

確かに、現在のWHOの事務局長は中国政府と懇意であり、そのためか、組織として発信する情報も、この数ヶ月、親中的かつ反米的なものが散見されました。

たとえば、新型コロナが中国で猛威をふるい、世界へ広がりつつあるときに、WHOのテドロス事務局長が、唐突に中国の新型コロナ対策を称賛するということがありました。

また、米国の新型コロナウイルス治療薬が良好な治験結果を出したときには、WHOは、なぜか治験が失敗したかのようなプレスリリースを公式サイトに掲載し、そのあおりでその製薬会社の株価が一時急落するということがありました。

確かに、いまのWHOが中国寄りであることは否めない事実なのかもしれません。そのため、米国が脱退を決断した気持ちを理解できなくはありません。

途方もない損失

しかし、今回の対応があまりにもまずかった最大の理由は、新型コロナのような感染症対策には、WHOのような国境を超えて対策を打てる国際機関が不可欠であるにも関わらず、米国のようなリーダーシップを取れる超大国が、その国際的な枠組みから外れてしまった点にあります。

具体的に言うと、米国脱退によって、米国以外の国々は、ワクチンと治療薬開発でぶっちぎりで先頭を走る米国と、情報共有、政策協調できる機会を大きく失うことになりました。

また米国自身も、世界最大の感染者数を抱えながら、世界各国と幅広く情報共有しながら、他国の被害が自国へ及ぶリスクを抑え込むような政策協調の機会を失うことになりました。

WHOがなくても、もちろん外国とは外交できます。しかし、WHOのような国際機関が便利なのは、WHOの場を借りて、仲の悪い国とも対話できる、特にアポイントを取り付けなくても、定期的かつ頻繁に世界中の国々と対話できる点にあります。

米国は、そんな便利な政策ツールを失ったのです。また、米国以外の国々、特に米国と仲が悪く、被害が出ている国も、米国との貴重な接触機会を失うことになりました。

米国の関与強化が望まれる

このように、米国のWHO脱退は、米国を含む世界各国にマイナスの影響を与えるわけですが、では理想的にはどうすればよいのでしょうか。

結論を先にいうと、米国はWHOから脱退するのではなく、逆に関与を強め、中国の相対的な影響力を薄めるべきだと思います。

米国は、もともと国立衛生研究所(NIH)のような感染症対策で圧倒的な実績のある政府機関を有し、民間でも、ワクチン、治療薬の開発において、世界最高水準の製薬会社を数多く抱えています。

このようなリソースの一部をWHOに投入すれば、他の加盟国も米国に同調的になり、米国も反射的に利益を受けますし、何よりもこうした動きは、西側諸国に歓迎されるでしょう。

もちろん、国際機関というのは、もともと中立的な立場から、世界各国すべての利益を公平に等しく増進することを目的にしています。WHO憲章に、以下のようにあるとおりです。

「各国政府には自国民の健康に対する責任があり、その責任を果たすためには、十分な健康対策と社会的施策を行わなければなりません。」

「これらの原則を受け入れ、すべての人々の健康を増進し保護するため互いに他の国々と協力する目的で、締約国はこの憲章に同意し…」

ですから、特定の国が、自国の国益を増進するために悪用してはいけないのですが、WHOの現状はやはり問題があると言わざるを得ず、「毒をもって毒を制する」ように、同等レベルの国力を持つ国に介入してもらわないと、状況が改善しないように見受けます。

そして、新型コロナの深刻な経済的インパクトを考えると、米国の政策転換は待ったなしの状況と言えます。

今年11月の米大統領選で、民主党のバイデン候補が勝てば、今回のWHO脱退は撤回されるという観測が出ています。その意味で、この問題も大統領選の結果にかかっていると言ってよいでしょう。

11月までに新型コロナ問題が制御不能に陥ったり、各国の経済状況がこれ以上、悪化しないことを願うばかりです。

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