レイバー・デー明けの今週は、やはり相場が荒れました。特にNASDAQ銘柄は大きく下落しました。ただ、現在の状況をどうとらえるかというのは、個々人の投資戦略によるのではないかと思っています。
グロース投資で短期取引しかしない方にとっては、今回の出来事は損切りが選択肢に入ってくる厳しい局面かもしれません。しかし、私を含め、それ以外の多くの投資家にとって、今回の出来事は、落ち着いて株式投資の基礎を勉強し直す良い機会になるのではないかと思っています。
そのようなわけで、きょうは今回のような調整局面をどうとらえ、いま何をしたら良いのか考えてみたいと思います。
時間軸の切り方で別物に見えるトレンド
今回の下落は、1か月くらいのスパンで考えると非常にショッキングなものがあります。人の記憶は、あまり昔のことは覚えていませんから、感覚的には今までの利益が全て吹き飛んでしまったような感じがします。
しかし、時間軸を変えると、全く景色が変わります。まさに「調整」、「小休止」くらいのものです。6ヶ月のチャートです。
1年のスパンで考えると、さらに余裕です。新型コロナのショックが視界に入るので、なおさら耐えられる気がしてきます。
今回のような下落が起きたときは、上記のように少し長いスパンのグラフを見て、大局観をつかみ直すことが大切です。
また、銘柄ごとの数字も見直しておくことも必要です。たとえば、PER、PSRから見て、今後も今まで通りに伸びていく余地はあるか、悪い材料は出ていないか調べます。そして、おそらく問題ないだろうという結論が出れば、そこでいったん心配を断ち切ることが大切です。
混迷の今やるべきこととは?
現段階では、まだ何とも言えませんが、今後、現在の金融相場が近いうちに終わり、グロース投資向きの相場からバリュー投資向きの相場へ切り替わっていく可能性もあります。つまり、上昇基調から下降基調へ切り替わる可能性があるということです。
そのため、いまからバリュー投資の勉強も始めておいた方が得策です。
念のために説明をしておきますと、バリュー投資とは、「割安な優良株を買って、中長期スパンで株価の上昇を狙う投資手法」です。これに対して、グロース投資とは、「成長途上の優良株を、株価の上昇中に買って、短期スパンでさらに高値で売り抜ける投資手法」です。
いままでは、グロース投資の手法が有効だったわけですが、これからはバリュー投資の手法が有効になるかもしれないということです。
バリュー投資の勉強
バリュー投資は、ウォーレン・バフェットの影響や、常識的で腹落ちしやすい手法であるためか、なぜか日本人に人気があります。しかし、バリュー投資は、グロース投資と比べても難易度の高い投資手法だと言わざるを得ません。
なぜなら、効率的市場仮説(参考記事)に従えば、そもそも「割安な優良株」というのは市場に存在しないからです。つまり、優良株には、必ずそれなりの高い株価が付くはずで、優良株が割安のまま放置されることは理論上ありえないのです。
ですから、バリュー投資は、効率的市場仮説が機能していない非常に稀な「市場の歪み」を見つけなければならず、そこに最大の難所があります。
またもう一つの難しい点は、株価との比較の基点となる、投資先企業の正確な価値(バリュー)を知るところにあります。これは主に財務諸表と決算状況の推移を見て調べるわけですが、これはベテランの会社経営者や会計のプロでも難儀すると言われています。
そのため、私自身もそうですが、一流のプロの見立てを参考にしながら、自分で考えていくしかないところがあり、それでも間違うことがあると考えています。
以上のように、バリュー投資をやるには、こうした企業の正確な価値を知ること、市場の歪みを見つけること、という2つのことをやらなければならないのですが、私はまず基本を書籍で勉強し、それに沿って有益なウェブサイトで最新情報を当たるようにしています。文献を少し挙げておきます。
株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 改訂版 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/24
賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法 (日本語) 単行本 – 2000/9/1
グロース投資の深掘り
他方で、現在の金融相場が終わるかどうかは、まだ分からず、今週の出来事はただの小さな調整局面に過ぎない可能性もあります。プロの方の見立てでは、現在の金融相場は今後も数年間続くと見ている人も多く、その可能性は十分にあります。
その意味では、グロース投資の勉強も並行して続け、さらに深堀りしていく必要があります。グロース投資の真髄は、高値をつけた成長株が、さらに高値をつけたところで売り抜けるところにありますので、まず芯の強い成長性を持った銘柄を見抜く見識と、どこで売るかというセンスと決断力を養う必要があります。そのための文献も挙げておきます。
オニールの成長株発掘法 【第4版】 (ウィザードブックシリーズ) 単行本 – 2011/4/15
ミネルヴィニの成長株投資法 ━━高い先導株を買い、より高値で売り抜けろ (ウィザードブックシリーズ) ハードカバー – 2013/12/14
グロースでもバリューでも行ける銘柄を探す
現在のような上昇局面での急な調整を受けて、私はグロースでもバリューでも行ける銘柄を探り当てる必要性を強く感じています。
株式投資においては、短期のグロース投資のつもりで特定の銘柄を買い、損失が出たという理由で、それを途中で長期保有に切り替えるのは禁忌なのですが、最初からグロースでもバリューでも行ける優良銘柄を探し当てて、それを保有している中で、相場の空気が変わったときに、グロースからバリューへ戦略を切り替えるのは問題ないと思います。
実際にそんな銘柄があるのかということですが、私はテスラ(TSLA)とズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)がそれに該当すると思っています。
テスラ(TSLA)
定量分析は、詳しいサイトが無数にあるので、そちらに譲るとして、テスラ(TSLA)は自動車メーカーであると同時にIT企業でもあり、さらにクリーンエネルギー企業でもあり、従来の枠に収まらないポテンシャルの大きな企業です。
イーロン・マスクという経営者は大変クセが強く、10年以上のスパンで考えると、未知数の要素が大きくなりすぎてリスクを感じますが、5年以下のスパンで考えると、テスラの先行きは明るいと思います。先日、SP500に採用されなかったことで今は下げていますが、そんなことはノイズに過ぎないと思っています。
ズーム(ZM)
ズーム(ZM)については、当初、GAFAMに潰されるのではないかという懸念がありましたが、模倣できない技術力が証明されつつあり、それが先日のモンスター決算にも現れました。
いったん下げていますが、これもノイズに過ぎず、新型コロナで生じたニューノーマルに支えられた需要を、今後も独占的に吸い上げていく見通しが立ったように思います。
現時点で、グロースでもバリューでも行ける銘柄というのは、この二つ以外に思いつきませんが、今後もこの方向で銘柄の発掘を進めたいと思っています。
相場の先行き観が不透明な現在のようなときは、心理的に動揺することなく、腰を落ち着けて勉強するのに最適なときではないかと感じています。
しかし、「心理的に動揺しない」ためには、十分な生活防衛資金を確保しておくことと、それに絶対に手を付けないことが必須です。これがなければ、おのずと相場の動向に揺さぶられてしまいます。私も偉そうなことは言えないのですが、生活防衛資金の保全は健全な投資生活の前提条件だと思っています。