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ポンペオ国務長官来日 四カ国会合(QUAD)は「独裁主義」への対抗策で一致

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昨日、米国のポンペオ国務長官が来日し、日本、米国、オーストラリア、インドによる四カ国外相会合("QUAD", Quadrilateral Meeting)に参加、対中政策について協議しました。

この会合の趣旨は、インド太平洋地域の平和と繁栄を推進することです。きょうは、今回のポンペオ氏の来日目的と、今後の四カ国会合の行方について考えます。

ポンペオ国務長官来日の目的

米国では、先週末にトランプ大統領の新型コロナウイルス感染が発覚し、米政府内でも大きな混乱がありましたが、ポンペオ国務長官は当初のアジア諸国歴訪のスケジュールを大幅に短縮し、日本だけを訪問しました。

ポンペオ国務長官は、米国外交の責任者であると同時に、もともと共和党右派の下院議員を務めた政治家で、政策や思想がトランプ大統領と極めて近く、個人的にも大統領と懇意であるため、こういう非常時には選挙支援を含め、ワシントンでもやるべき仕事がたくさんあったはずなので、かなりの無理をして訪日したはずです。

そして、ここまで無理をして日本に来た目的が何だったかと言うと、それは日米豪印というアジア太平洋地域の主要四カ国と、対中政策を強化するためでした。

この四カ国会合は、実は昨年9月、国連総会中のニューヨークで初めて開催され、今回は二回目だったため、今回はより具体的で突っ込んだ協議が行われました。主な合意・確認事項は以下のとおりです。

  • 自由で開かれたインド太平洋(FOIP, Free and Open Indo- Pacific Strategy)」が、当地域の平和と繁栄に向けたビジョンであることを改めて確認する。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」を現実のものとするため、より多くの国々へ連携を広げていく。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」を具体的に推進していくため、質の高いインフラ、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援、教育・人材育成などの諸分野で、実践的な協力を更に進めていく。
  • 新型コロナ問題に関する保健・衛生分野、デジタル経済分野で、新たな国際ルール策定で引き続き連携していく。
  • この日米豪印・四カ国外相会合を定例化する。

このように、議題は多岐にわたりましたが、この四カ国会合の目的は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の維持であり、別の表現を取れば、これを阻害する中国を牽制し、封じ込めるところにあります。

なぜ中国を敵視するのか?

ポンペオ国務長官という人は、軍人、政治家という経歴を持っていますが、外交責任者として、言葉のチョイス、レトリックの巧さにも際立ったところがあります。

立場上、米中対立について聞かれることが多いわけですが、きのうのNHKのインタビューでも、いつもと同様に、「これは、米国と中国の対立といった問題ではない。これは、自由か独裁か(という選択)の問題なのだ」という表現をとり、米中対立を、自由主義(民主主義)と独裁主義の対立という形に置き換えて、問題の本質を指摘しました(参考記事)。

It’s not about the United States versus China. This is about freedom or tyranny... This is not a rivalry between the United States and China. This is for the soul of the world.

Michael Pompeo, Secretary of State, Interview by NHK, Ocotber 6, 2020

米国は、一般的なイメージとしては、ジャイアンのような「いじめっ子」のイメージが強いと思いますが、もともとはヨーロッパで迫害にあった人々が、命からがら北米大陸に逃げて作った「いじめられっ子」の国です。

このような事情で作られた国ですから、建国理念も基本的人権の尊重を第一に掲げており、人権の尊重が国益の追及と同義になっている珍しい国です。

両国の軍事活動や諜報活動などを見ると、米国も中国もやっていることは似たようなものですが、やっている目的が、中国は政府の利権の追求、米国は人権の尊重(=国益の追及)と、真逆です。

かつて、良心の呵責に苦しんで米国の諜報活動を世間に暴露したスノーデン事件といった出来事がありましたが、これなどは、この辺の本質をはき違えたために起きた事件だと思います。

米国と中国は、ともに横暴にも見える大国ですが、この二国は建国理念が根本的に異なっており、その違いが、先ほどのポンペオ国務長官の「これは、民主主義か独裁主義かの問題なのだ」という表現に集約されています。

つまり、米国は中国を敵視しているのではなく、独裁主義を敵視しているのです。

四カ国会合の最終ゴール

数ヶ月前まで、この四カ国会合は、「アジア版NATO」の原型と言われたこともありましたが、現在では、そこまでの軍事同盟的な色彩は後退した感があります。

理由としては、日本が憲法9条問題を抱えていること、そして四カ国会合のメンバーではありませんが、米国の重要な同盟国である韓国が、南北問題の解決に中国の協力を必須としていることで、米国と距離感ができていることが挙げられます。

しかし今回、ポンペオ国務長官が米国内が混乱する中、わざわざ来日して四カ国会合を取り仕切ったのは、はっきり言って、仮に米国で政権交代があっても、この外交トラックを恒久的な仕組みとして定着させたかったからだと言われています(参考記事)。

米国以外の日豪印の三カ国も揃って、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を維持する固い政治意思があるので、今回ポンペオ氏がわざわざ来日して、地固めをしてくれたことは、三カ国にとっても大変大きな外交成果となりました。

ただ少し心配なのは、三カ国の中で態度が一番曖昧なのは日本だということです。日本は、中国の隣国で、古くから多くの文化的な影響を受けていることもあり、政治家や経済人にも中国にシンパシーを抱いている人が大勢います。

この事自体は歴史の必然であり、全く悪いことではないのですが、問題は、大変失礼ながら、この人たちの多くが、頭の中で中国と中国政府を区別していないということです。

四カ国会合が目指しているのは、中国の敵視政策ではなく、独裁主義への敵視政策です。その意味で、四カ国会合は、地域だけでなく、世界全体の政治・経済の安定と発展に貢献する有効かつ貴重なスキームなので、今後も大事に育んでいく必要があります。

おそらくその着地点は、NATOのような軍事同盟にはならないと思いますが、中国における独裁主義を封じ込める「準軍事・経済連携協定」のような形に発展していくのではないかと思われます。

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