ROEとは何か?
ROEとは、「純利益が株主資本の何%に達しているか」を表す指標です。日本語では、株主資本利益率と訳され、Return On Equityの略になります。equityは、株主資本、株式という意味です。ROEは、アール・オー・イーを読みます。
ROEは、純利益が株主資本の何%に達しているかを表す指標ですから、下記の計算式で算出されます。
ROE(株主資本利益率)= 純利益 ÷ 株主資本
ROEは、株主から集めたお金、つまり株主資本を、会社がどれだけ効率よく使って利益を出しているかを示しているので、会社経営の効率性を表す指標とされています。
ROEの平均値は、一般論として述べることは難しいですが、米国株の場合、15-20%くらいと考えられているようです。
なお、上記の数式では、純利益、株主資本ともに、直近の貸借対照表の確定値を使うのが一般的です。また、株主資本は実質的に自己資本なので、ROEを「自己資本利益率」と訳す例も見られます。
ROEは、何の役に立つのか?
ROEは、株主が出資したお金を、どれだけ効率よく使って利益を稼ぎ出せているかを示しているので、ある意味で、株主が最も関心を持っている疑問に答える数字だとも言えます。
また。比率の指標なので、会社の規模と関係なく、その会社が優秀な会社なのかどうか、会社のクオリティを分かりやすく示していると考えることもできます。
つまり一言で言えば、ROEは、その会社が優良企業かどうかを示しています。その意味で、非常に使い勝手が良い指標だと言って良いでしょう。
ROEの留意点
将来の要素は含まれていない
ROEは、直近の過去の貸借対照表の数字を使って計算します。そして、冒頭のROEの計算式を再掲しますが、ここに株価の要素が一切入っていないことに注意を払う必要があります。
ROE(株主資本利益率)= 純利益 ÷ 株主資本
株価は、将来のあらゆる要素を瞬間的に織り込んでいくので、会社が将来どうなるかを、ある程度正確に示しますが、ROEにはその要素が入っていないのです。
株式投資をしていると、どれだけ売上や利益が出ても、株価が上がらないケースに直面することがあります。その大半は、売上や利益には現れてこないネガティブな要素が株価に織り込まれていることが多いからなのですが、ROEにはこうした将来的な要素が一切含まれていないことを知っておく必要があります。
株主資産の大きさに左右される
もう一度、ROEの計算式を出しますが、分母が「株主資本」になっている点に注目してください。
ROE(株主資本利益率)= 純利益 ÷ 株主資本
スタートアップ企業などにありがちなことですが、株主資本がまだ小さい場合、実力以上にROEが跳ね上がることがあります。逆に、会社が何らかの事情で内部留保を一時的に積み上げたような場合は株主資本が膨れ上がるので、ROEは実力以下に下がります。
このように、ROEは、企業の成長段階やそのときの事情によって、実力から乖離することがあることも知っておく必要があります。
総資産を有効活用できているかは「ROA」を使う
企業は、株主資本、つまり「自己資本」だけでなく、借入金や社債を含めた「他人資本」も含めて、できるだけ多くの売上と利益を稼ぎ、株価を押し上げ、多くの配当を出すことを、株主に求められています。
つまり、株主資本だけでなく、手元にある全資産を総動員して稼ぐことを求められているわけです。
しかし、ROEは株主資本だけの利用効率を表す数字なので、全資産の利用効率については何も語ってくれません。
このように、企業が全財産、つまり他人資本も含めた「総資産(総資本)」を使って、効率的な経営ができているかどうかを知りたい場合は、ROA(総資産利益率 Return On Asset)という指標を使います。ROAは、下記の計算式で得られます。
ROA(総資産利益率)= 純利益 ÷ 総資産
企業活動は、いわば総力戦ですから、会社がとにかく全財産を使って、どれだけ善戦しているのかを知りたいこともあると思います。その場合は、このROAを使うとその点がはっきり分かります。
ROEは、他の指標と併用する
ROEは、以上のように、株主が出資したお金を使って、会社がどれだけ利益を出せているかを示しているので、株主が最も知りたい疑問に答えてくれる指標だと言えます。
他方、ROEは、将来性を示す要素が一切入っていない、会社の実力から乖離する場合がある、総資産の利用効率は表していないなど、限界もあります。
そのため、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROA(総資産利益率)などと併用するのが一般的です。