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バーレーンがイスラエルと国交正常化 トランプ再選に追い風

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昨日、バーレーンがイスラエルと国交正常化を果たしました。先日のアラブ首長国連邦(UAE)に続き、二カ国目で、累計では、エジプト、ヨルダンと合わせて四カ国目になります。歴史的快挙であり、トランプ政権にとって大きな外交上の得点となります。

きょうは、このニュースを取り上げます。

バーレーンとは?

出所:Google Map

バーレーンは、ペルシャ湾に浮かぶ小さな島国です。サウジアラビアの沿岸にあり、同国とは橋で結ばれ、経済や人の交流でも深い結び付きがあります。

他方、北の対岸にはイランがあり、同国とは緊張関係にあります。バーレーンは政府王族がスンニ派、国民の多数がシーア派という構成であるため、シーア派のイランはバーレーンへの影響力強化を狙っており、バーレーンはこの動きを絶えず警戒しているという関係にあります。

バーレーンは、先日のUAEと比べれば小国です。UAEの人口は約980万人、GDPは9870億ドルあるのに対し、バーレーンの人口は約150万人、GDPは780億ドルしかありません。

しかし今回、先日のUAEに続き、バーレーンがイスラエルと国交正常化を果たしたことは、UAEの国交正常化が突発的な出来事ではなく、中東のアラブ諸国全体がイスラエルと和解し、共存共栄していく趨勢が形成されていることを明確に示した点で、たいへん大きな意義があります。

今回の国交正常化の意味

中東におけるイスラエルの優位性の誇示

今回の一連の国交正常化の意義は、イスラエルとアラブ諸国が仲直りして良かったねという話ではありません。

国家間の関係は人間関係と違い、そこに好意や共感は介在せず、計算づくで動きます。ですから、現在の状況は、中東におけるイスラエルの優位性を誇示するもので、アラブ諸国の相対的な地位低下を現す現象です。

アラブ諸国としては、同胞のパレスチナを支援するのに疲れ果て、イランのテロ輸出に憤り、追い込まれてイスラエルと和解しています。ただ、プライドは傷ついていますが、経済的なインセンティブはあるので、前向きにイスラエルと付き合っていこうという意思はあります。

イラン包囲網の強化

先日の記事でも触れたとおり、一連の国交正常化の推進役、主人公は、米国です。米国がイスラエルのバックに立って、アラブ諸国に対して、イスラエルと和解するよう圧力をかけているのです(参考記事:「孤立する大国イラン:イスラエルとUAEが国交正常化」)。

その目的は、イランを孤立させ、弱体化させることです。なぜならば、イランはその特異な思想に基づき、一貫してイスラエルを破滅させることを国是としているためです。

米国のユダヤ人コミュニティとそのサポーター、そしてイスラエルは、このイランの動きを一貫して警戒しており、イランの弱体化に心を砕いてきました。ですから、米国がイスラエルとともに、アラブ諸国にイスラエルと国交正常化するよう働きかけをしているのは、中東でイランへの包囲網を築く目的に基づいたものです。

過去においては、米国は原油資源をアラブ諸国に依存してきたことから、アラブ諸国には遠慮があったのですが、近年米国がシェール革命を経て、原油を自給できるようになったことから、このタガが外れ、アラブ諸国に強く出れるようになりました。現在、国交正常化を加速させているのには、このような背景もあります。

トランプ再選への追い風

ユダヤ人は20世紀初頭まで長く欧州で迫害され、一部はイスラエルに渡り、別の一部は米国に渡りました。欧州では、社会からのけ者にされ、手に職をつけないと食べていけなかった事情から、ユダヤ人家庭はもともと教育熱心なところが多く、結果的に米国に移民しても社会の支配層に浸透することが多くありました。

そのため、米国の政治、経済、メディアの支配層には、今でもユダヤ人の人々が多く食い込んでおり、社会全体に対して多大な影響力を持っています。米大統領選でもユダヤ人の支持は非常に大切で、今回の一連の国交正常化は、トランプ氏の再選に追い風となります。

一連の国交正常化は、トランプ氏の娘婿でユダヤ人のジャレド・クシュナー上級顧問の手腕によるところが大きく、また過去の経緯から、共和党はイランに対抗的、民主党はイランに融和的という外交姿勢も明らかになっています。

そのため、トランプ氏が再選されれば、現在の国交正常化はさらに加速、バイデン氏が勝利すれば、この動きは頓挫するということは衆目の一致するところです。そのためユダヤ人の有権者は、票と資金の両面でトランプ氏を全力で応援することは疑いようのないところです。

トランプ再選は良いことだけど

前回、UAEとの国交正常化を達成した後、ポンペオ国務長官が中東を歴訪したときは、アラブ諸国との外交交渉が不発に終わったとの報道があり、もうこれ以上の国交正常化はないような観測が立っていたため、今回のバーレーンのニュースは意外でした。

11月までの選挙まで、あと二ヶ月弱ありますから、あともう一国くらい後に続く可能性はあります。そうすれば、トランプ氏にはますます有利に作用するでしょう。

米国株投資家の多くは、トランプ再選を願っていると思いますので、今回のニュースは良い話です。

しかし、トランプ氏のアキレス腱は国内融和にあります。現在の米国内の分断は、ただの社会的不和とかいう次元ではなく、武力衝突、武力紛争に発展しかねないきな臭い要素があり、これは本当に洒落になりません。この懸念を解消しないと、依然としてバイデンに票が流れていくと思います。

参考記事:第二次南北戦争は起きるのか 米国における分断と対立のエスカレーション

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