大統領選挙を約1ヶ月後に控え、米議会が目の回るような忙しさで、3つの大きな案件を処理しています。暫定予算(つなぎ予算)、新型コロナ支援予算、最高裁人事の3つです。
米上院は共和党が過半数、米下院は民主党が過半数を押さえており、複雑なパワーゲームが展開しています。
3つの案件ともに、米株式市場に不透明感を増し加える要素があるため、注意を要します。
米上院、暫定予算を可決
2020年度の政府予算が9月30日付けで失効するため、米上院がギリギリのタイミングで、2021年度の予算(20年10月~21年9月)のうち、10月1日から12月11日までの暫定予算(つなぎ予算)を可決しました。
これが可決されなければ、10月1日から一部の政府機関の運営が停止するところでしたが、そのような「政府閉鎖(government shutdown)」の事態が回避できたということになります。
ただし、この暫定予算も12月に切れるので、事によったら新大統領が決まらない大混乱の中で、政府閉鎖となり、国内がカオスと化す可能性もはらんでいます。
米下院、新型コロナ支援予算をめぐり与野党が攻防
民主党が2.2兆ドルの予算案を作成、共和党が1.6兆ドルまでの削減を要求し、溝が埋められない状況です。
ムニューシン財務長官(共和党)が、議会民主党と共和党の間に立って、ペロシ下院議長(民主党)と協議を続けており、10月1日にも何らかの合意に至る可能性が指摘されていますが、先行きは不透明です
この予算案には失業者への給付金も含まれており、株式市場のセンチメントを変えるほどの力がある案件なので、日本時間の明日朝にかけて、相場が乱高下することも予想されます。
米上院、最高裁判事の承認に向けて準備へ
先日、トランプ大統領が、保守派のエイミー・コニー・バレット氏を新たな最高裁判事に指名したので、上院がこの人事案を審議します。
上院は共和党が過半数を占めているので、この人事は承認される公算が高く、最高裁の判事は、保守6名、リベラル3名と、保守的な方向へ強く傾斜することになります(参考:「米最高裁人事、米大統領選と株式市場に重大なインパクト」)。
最高裁判事の任期は終身であるため、米国は今後20年くらいの長い時間をかけて、保守色の強い国に変化していくものと思われます。注目は移民問題に対する法的判断で、内容によっては米国の人口動態にも影響を与えます。
以上、3つの案件のうち、短期スパンで相場に影響を与えるのは、新型コロナ支援策です。次いで、12月に政府予算が再度失効する問題は、選挙後のアジェンダとして国内を大きく揺さぶる可能性があります。
最高裁人事の問題は、一見したところ地味ですが、米国という国の姿を変えてしまう可能性をはらんでいるとともに、移民問題の取り扱いを通して、長期スパンでは米経済の行方にも大きな影響を与える問題です。