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グーグル、米司法省から提訴 GAFA解体論に潜む懸念

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10月20日、米司法省がアルファベット傘下のグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴したと、米メディアが一斉に報じました。

今年7月には、GAFAのCEOが米下院に召喚されて、反トラスト法(独占禁止法)の観点からヒアリングを受けていたので、予期していたとは言え、来るべきものが来たという感じです。

提訴の理由

今回、米司法省は、アルファベット傘下のグーグルが、検索市場と検索広告市場での圧倒的地位を維持するため、反競争的行為に関与したという理由で同社を提訴しました。つまり、自由競争を阻害した、反トラスト法に違反している疑いがあるということです。

具体的には、スマホメーカー、通信会社などに、自社の検索サービスを標準搭載するように取引を行い、競合他社を締め出したということが指摘されています。

報道では、アップルのiPhoneのブラウザ、Safariに、グーグルの検索サービスを標準搭載するよう取引を行い、さらにアンドロイド携帯のOSに制限をかけて、グーグル検索を使用するように誘導して、結果的にスマホの検索サービスを独占している点などが問題とされているようだという指摘があります。

おそらくこのまま行くと、事業分割などを通じて、独占状態を解消する方向へ議論が進みそうな気配があります。

事業分割における懸念

たしかに、グーグルなど、いわゆるIT界の巨人であるGAFAには、自由競争を阻害している側面があるのかもしれません。

しかし、今回の例で言えば、グーグルのような会社に反トラスト法を適用して事業分割し、結果的に会社を弱体化させることには、2つの大きな懸念があります。一つは、サービスの質の低下であり、もう一つは地政学的な問題です。

サービスの質の低下に関する懸念

今回の提訴には、いくつか論点があるようですが、そのうちの主なものは、グーグルが検索サービス市場を独占しているというものです。

確かにグーグルが、検索市場をほぼ独占していることは事実です。しかし、こうなった原因は、グーグルが市場を独占するように手を回したからなのでしょうか。

もしかしたら、そうした一面はあるかもしれません。しかし、市場独占に至った最大の理由は、グーグル検索が、他の検索サービスと比べて圧倒的に優れていたからなのではないでしょうか。

90年代にインターネットが出てきた頃には、Infoseek、Lycos、Excite、Altavistaなど、無数の検索サービスがありました。しばらくして、グーグルが出てくると、これらが全て消えていきました。

グーグルは後発組だったのに、なぜグーグルだけが生き残ったのでしょうか。それは、おそらく多くの人が感じている通り、グーグル検索は、他と比べて、自分が探したい情報をピンポイントで探し出してきて表示する能力に優れていたからです。

このように検索ワードから、検索者の意図を読み取り、そのニーズに合わせた検索結果を引き出す仕組みを「アルゴリズム」と言います。

アルゴリズムは、言ってみればプログラムのようなもので、グーグルは、このアルゴリズムの正確さで好評を博し、市場を独占したということが言えます。そして、アルゴリズムの開発と改善を支えたのは、検索サービスに付随する広告等による独特の収益モデルにありました。

反トラスト法の理念の一つは、生産者間の競争を促進し、消費者により良いサービスを提供することにあります。ですから、もし米政府が反トラスト法をグーグルに機械的に適用して、グーグルの収益構造を壊せば、検索サービスの質の低下を招き、反トラスト法の観点からは本末転倒となります。米政府はこのあたりのポイントを、入念に調査検討する必要があります。

地政学的な懸念

現在、米国と中国は冷戦状態、というか、サーバー空間では、すでに戦争状態にあります。こうした中で、GAFAのような米国の経済力、技術力の主軸となっている企業にメスをいれることには細心の注意が必要です。

自由競争を促進するために、法律に従って巨大企業を分割するのは結構なことですが、国際市場における最大の競争相手は、そもそも法規則を遵守せずに経済活動を行っていることに留意する必要があります。

中国という国を理解する上では、私はポンペオ国務長官の一連の発言が参考になると思っています(参考記事)。簡単にまとめると、中国政府と中国国民は別である、中国国民は米国の同志である、しかし中国政府は全体主義に基づく体制であって、世界の自由主義を破壊しながら不当に利権を肥やしている、その結果、自由主義世界の利益を毀損しているというものです。

たしかに国内市場の自由競争を促進するためには、反トラスト法を積極的に活用するのが良いのかもしれません。しかし、現在、国際市場で起きている競争は、そうした基準をそのまま適用できない複雑な事情があります。国内市場でプラスに働く施策が、世界市場では大きくマイナスに作用し、米経済の根幹を揺るがす事態を招きかねないということです。

今回のニュースは、日本時間の昨晩に飛び込んできたわけですが、そのときにグーグルの株価はじりじりと上げていました。そんなことは織り込み済みという意味なのかもしれません。

グーグル(アルファベット)をはじめとするGAFAは、これまで米経済を牽引してきました。いろいろ細かい問題はあるかもしれませんが、米司法省、米議会は大局的な観点から判断を下してほしいと思っています。

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